●製作年:1768年●素地:ソフトペースト（軟質磁器）●サイズW:5.5cmH:6cm装飾：Charles-Louis Mereaud→1756-80年まで花絵付師として在籍★マイカップコレクションよりグリーンを用いた作品はウォレスコレクションを始め、世界各国の美術館で拝見することができます。当時最も人気だったのはブルーセレステ、グリーン、ロゼなどでしたが、考案者エローの死去やフランス革命後の新体制以降、製作されることは無くなり、幻とされてきました。比較的巷に溢れているものは19世紀にイギリスでコピーしたものであり、現代のセーブルでも実際製作されていますが、これらはすべて”再現”であり、当時の色彩を完全に表現することはついに実現できませんでした。現代セーブルのグリーンやピンクはあまりにもコントラストが強すぎ、単調な色にしかどうしても見えず、私は頑張っても好きにはなれませんでした。滑らかで艶のある見事な色彩にプラスして最高の金彩技術を封じ込める。。これ以上贅沢なことがあるのかという境地です。上述したパレットを用いた作品はヨーロッパの王侯を虜にし、誰もが憧れた作品群でした。今回は所有するカップコレクションからグリーンの作品をお出しします。Mereaudの描画の変遷を知っている方には言いたいですが一番ベストな時期だと個人的には思います。艶がありながらも遊び心あふれる初期の描写から、よりリアリティを追求して素晴らしい花絵へと変化しています。特に中央の下を向く花の中で展開する陰影は本当に素晴らしく、高給取りの一人でも あった職人の実力をこんな小さな作品ですら感じ取ることができるのです。特筆すべきダメージの無いコンディションです。カケやワレもありません。保管状況によっては金彩の酸化や変色が見られますが、特段見られず、複雑に注ぎ込んだ技術がそのまんま手に取ることができます。唯一挙げるとすれば、口元の僅かな金彩の擦れとカップ内底部の傷でしょうか。いったい誰が、このカップにスプーンを入れてかき混ぜたのか…想像するのもロマンチックです。